アクリル板の種類
押出板 原料をローラーに流込み押し出して成型した板
当店では、おもに水槽以外の用途で使用
押出板の長所
- キャスト板に比べ安価なので広く一般的に使用される
- 切削、熱を加えて曲げたりする加工がしやすい
- 板厚が一定(公差±0.2ミリ以内)なので精密な寸法が出しやすい
- 接着剤が比較的入手しやすい
押出版の短所
- キャスト板に比べると柔らかいので、加工で発生する高熱に弱い(融けやすい)又、薬品に非常に弱くアルコールを含む洗浄剤が接着面に付着すると高確率で変色や破損の原因になる
- 加工全般が容易な反面、接着面の経年劣化はキャスト板より早い
キャスト 重ね合わせたガラス板の隙間に原料を流し込み製造した板
当店では水槽に使用
キャスト板の長所
- 押出板に比べ硬いので熱負荷がかかる加工等にアクリル板のわりには耐えられる
- 主にキャスト板で使用される接着方式の重合接着は、押出板の溶剤接着に比べ接着面の経年劣化に対しての耐久性が高い(キャスト板重合接着がアクアリウム水槽に使われる理由はこの点)
キャスト板の短所
- 板が厚くなるほど押出板よりも高額になる
- 板厚6mm以下の薄い板は重合接着に不向き(処理の都合上、精度が出し難い為)
- 高精度を求める場合、ほぼ研磨作業になるので工賃が高額になる
- 接着剤の薬液調合がプロでも各社違う(企業秘密の所が多い)ため、個人で行うのは難易度が高い
- 恒温恒湿室などの高額で大きい設備が必要になるので敷地と工場が必要になる
押出板とキャスト板の見分け方
提携しているプラスチック加工専門の職人さん達は「板メーカーの品名、品番がプリントしてある保護紙がついている状態(新品の元板)じゃないと無理」との事です。
破損時に接着面などの裂け方や割れ方を見れば判別可能ですが、破損してから見分けが付いても意味がないので、肉眼で見分けるのは実質不可能と思った方が良いです。
雑貨店などで良く見かける板厚2~3mm前後のアクリル文具や雑貨は、加工のしやすさ、コスト面から押出板を使用している事が多いと思います。
又、透明プラ(PP)と呼ばれるプラスチックの事もありますが、ペン立てやちょっとした小物入れなどには必要以上の強度は不要なので日常的な使用ならまったく問題ない製品が作れます。
どちらの板が良い悪いではなく、適材適所という選択になります。
アクリル水槽の耐久性
水量に対して最低限欲しい板の厚みがないと、満水状態の時に水槽中央部から少し下あたりが膨らんできます。
アクリル板自体は弾性があるので水圧で多少は膨らむのが当たり前ですが、特に一定以上の水槽サイズ(60cm規格サイズ以上)で、水深が50cmを超えるあたりから板の厚みが足りないと肉眼でも分かるぐらい膨らみます。
膨らむ=即決壊という事はありませんが、生き物が入る箱なので膨らんでいるのが目視では分からない程度の安心感がある板厚をおすすめします。
当店では、水槽の仕様に対して板厚を「強度的に厳しい」という場合、決壊の恐れより「水槽の膨らみ」に対して厳しいという意味になります。
「強度的に厳しい」=「すぐ決壊して水が漏れる」という訳ではありません。
アクリル水槽は夏冬に使用する冷暖房による急激な室内の温度湿度の変化や、満水状態から水を全部抜いてしばらく放置したのち急に温水を入れると一気に耐久性が下がりますので急激な温度や湿度の変化は加えないように気をつけましょう。
板の厚みは接着面積に直結するので、板が厚ければ厚いほど決壊の心配は低くなりますが、水槽自体の重さと価格も増して行きます。
クラックとクレーズの違い
「クラックが入った」という表現がありますが、アクリルキャスト板を重合接着した物に、いきなりクラック(亀裂、又は裂け目)が入る事はまずありません。ほとんどの場合クラックでは無くクレーズ(簡単に言うと変色)の事が多いです。
クレーズが入る主な原因はシンナー、アルコール等の薬品を含むクリーナーや洗剤(アルカリ性)がアクリル板の接着面付着するとクレーズ状態になる事が多いです。
クレーズになったからと言ってすぐにクラックになり決壊する事はありませんが、メンテナンス時は洗浄剤などは使用せず、通常の水またはぬるま湯で絞った柔らかい布を使用して清掃をしましょう。
尚、アクリル水槽は長期間使用する事により接着面のクレーズは大なり小なり必ず出て来ます。
当店推奨仕様のアクリルキャスト水槽を通常の使用でご利用頂いているお客様から決壊したという話は今のところ伺っておりませんので、少なくとも通常範囲内での使用ですと10年程度は持つと思われます。(2013年からのデータになります。)
生き物を飼う目的で強度的に好ましくない仕様の水槽をご希望の場合、ご注文をお受け出来ません事をご了承頂けますと幸いです。
生体の飼育が目的では無いアクリル製品の場合は、かなり攻めた仕様の製作実績が多々ございますので、お気軽にお問い合わせください。